今日、いつものように産んだばかりのお母さん達10人
くらいにお話していたところ、私の中では超有名なのに
知っている人が誰もいなかった話なので、
はてなに移ってから初めての医療記事を書きます。
国立成育医療研究センターのアレルギー科
大矢幸弘先生達が2014年10月1日に発表しました。
アレルギーの発症、保湿で減少か アトピー抑制が効果?:朝日新聞デジタル
テレビで記者会見されたのを見た方も多いと思います。
魚拓はこちら。
要するに、生まれたばかりのお子さんの皮膚を
保湿剤で保護すると、アトピー性皮膚炎に
なりにくいよという話です。
59人の新生児には毎日一回以上全身に保湿剤を塗り、
別の59人の新生児にはほとんど塗らなかったんですって。
東京小児科医会で聞いた講演では、カサカサしたところ
だけに塗っていたらしい。
そうして生後32週まで続けていたところ、全身に保湿剤
を塗っていた群は32%、アトピー性皮膚炎の発症が
少なかったんだそうです。
乾燥して皮膚のバリアが壊れていると、痒いとか痛い
といった症状の他にもそこからアレルゲンが侵入して、
アトピー性皮膚炎が起こるのではないかと
言われているんですね。
そうでしょ。やっぱりワセリンでしょ。
こちら。
ただし、大矢先生は石鹸で洗うのはむしろ推奨でした。
確かに石鹸を使うと皮脂が落ちて皮膚のバリア機能が
低下するけれど、洗った後に保湿するのが大事。
常在菌として皮膚にいるブドウ球菌やダニが排泄する
セリンプロテアーゼが皮膚に付着しており皮膚の
悪化要因となるからです。
そして欧米人のように石鹸の混ざったお湯にしばらく
浸かってる訳ではなく、日本人の洗い方だと石鹸が付いて
いる時間は1-2分だからって。
でも、私が外来で診るような乾燥がひどいお子さんだって
お母さん達は「石鹸は(スポンジ等を使わないで)手で
塗っています。」って言ってるけどな。乾燥性皮膚炎の
お子さんはともかく、アトピー性皮膚炎は石鹸を使った方が
いいということでしょう。
それから、大矢先生たちの研究は新生児を対象とした
アトピー性皮膚炎発症の機序を明らかにするという話なので、
新生児以外の人にはお風呂あがりに保湿をすることが大事
ということですね。
私がその講演に行った時の Twilogの2014.10.19を
見てるんですが、保湿剤はどれが一番効果的だという
研究はないそうです。でも安価で安全だから
ワセリンでいいんじゃないかな。
追記:大矢先生が保湿剤を具体的にワセリンと言ったという
ことはなかったみたいです。私の勘違いかもしれません。
すみませんでした。
講演で聞いたのは、どの保湿剤がいいかという検討は従来の
論文で言及されていないということでした。コメントを頂いた
みきさん、ありがとうございました。
安価で安全で手に入りやすいからワセリンがいいのでは、
という私の意見には変わりありません。