なぜ迷信を継承するのか

助言で他人の行動を変えさせたいと思ったら、根拠を示さなくてはいけません。

由子さんを指導したこの助産師のように、授乳している女性にいろいろなことを禁止するならそれはなぜ必要なのか、合わせて言わないとダメ。

上記の話は間違っているところとある程度正しいところがあります。

 

まず、母親が肉・パン・揚げ物を控える理由はありません。

肉はタンパク源としてとてもいいですね。ビタミンBも摂れます。厳格過ぎるベジタリアンが動物性タンパクを一切摂らず、↓完全母乳栄養にするとこういうことがあり得ます。

菜食主義の母親より生れ,重症ビタミンB12欠乏症を呈した完全母乳栄養児の1例(原著論文/症例報告)

クリックで読めないので、読みたい方は別冊を請求するか医学雑誌が置いてある図書館から取ってもらって下さい。

 

パンはなんでダメなんだろう?パンが主食の国のお母さんたちはどうしたらいいの?気にしなくていいです。

揚げ物はあれでしょ?また、乳腺炎になるとか、ドロドロの母乳になるとか言うんでしょ。なりませんよー。油脂をたくさんとっても母乳中の脂肪は増えません。組成は変わりますが、母乳はドロドロになりません。一回の授乳で飲み始めの前乳と終わりの頃の後乳に分けると脂肪分が増えているものですが、これは食事の影響ではありません。乳腺炎と食事も関係がありません。長い人だと授乳期間って2-3年あるでしょう。その間、揚げ物が食べたいこともファストフードが食べたいこともあるに違いない。どうぞ食べてください。

 

次に、子どもが嫌がってもうつ伏せにするのは何が目的なんでしょう?生後6ヶ月未満は特に乳児突然死症候群(SIDS)とうつ伏せ寝の関連が大きいと言われています。うつ伏せにしてもいいけれど、その間に目を離すは窒息の可能性もあり危険です。寝返りするようになったらいくら大人がうつ伏せにと思っても、勝手にコロンと仰向けになるでしょう。ひっくり返さなくていいですからね。自由に寝返りができる子は窒息のリスクはとても減ります。

もしかしたら、首がすわったりハイハイができたりが早いからという理由かもしれません。そういった基本的な動作は、練習を必要としません。また、早くできたから良いことも特にありません。泣いて嫌がったらやめましょうね。

 

添い乳の禁止は、若い母に楽をさせるな的な意地悪さを感じるのは私だけでしょうか。添い乳・添い寝もSIDSと関連があると言われたこともありますが、ソファーで一緒に寝るのが危険なようです。産んでまもなくで体がしんどく、寝不足でいたらとても疲れます。一定の基準を守れば危険ではないので、なるべく楽な方法で授乳しましょう。

NPO法人 SIDS家族の会 | SIDSの危険因子について

 

最後の3時間おきの授乳推奨ですが、3時間にこだわる必要はないものの確かに頻回に授乳すると母乳はよく出るようになります。母乳が溜まった状態でずっといると「もう、母乳はいらないのね。」と判断され、止まってきちゃうからです。母乳分泌を調節する因子は片方ずつ出るので片側だけ飲んで赤ちゃんが眠ってしまい、反対側が張っているようなら搾乳しておくと止まりにくく、分泌量を維持できます。1時間おきに授乳してもかまいません。

 

 

 

これね。

結婚式に出たっていいじゃない。なんで出たら小言をもらうんだろう?ご馳走を食べるから?肉や油物だけでなく、乳製品も、卵も乳腺炎とは関係がありません。アレルギーとも関係がありません。いつもより授乳しにくい服だと飲み残しができてしまい、おっぱいが張る原因にはなるかもしれない。それから、席をはずして頻繁に授乳ができないというデメリットもありますが、結婚式って一生に1回の晴れの席でしょう。親しい人の大事な時に居合わせたいという人に小言を言うのは、ダメだな。医学的に根拠がなかったら、ますますダメでしょう。うまく過ごせる方法をアドバイスするならともかく。

 

「離乳食とBFに冷凍を使わないように」は離乳食とベビーフードに冷凍食品を使わないようにという意味でしょうか。これは、栄養士パパのこの本を読んで下さいね。

乳幼児から高校生まで! 管理栄養士パパの 親子の食育BOOK (専門医ママの本・番外編)

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冷凍食品、毒じゃないです。全部を手作りしても飛躍的に栄養価が上がったりしません。

 

 

そういうわけで、迷信や都市伝説、噂、間違った指導を継承したがる人は、まだいます。

新米の母を叱って優越感を得たいのか、自分はよく知っているという承認欲求を満たされたいのか、物やサービスを売りつけてお金を儲けたいのか…。残念なことだけど医師、助産師、看護師、保健師といった人たちでもそういう人がいるんです。さらに残念なことに、間違ったことを言う有資格者を罰する規定もありません。

だから医療リテラシーは自分でつけていかなくはいけないんです。本当に残念。

 

今度出る新刊にも食事と母乳のことは書いてあるので、母乳とミルクとその周辺にいる人たちはぜひ、読んでみてください。こっちは根拠が載ってます。

産婦人科医ママと小児科医ママの らくちん授乳BOOK

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イラストは今をときめく赤子しぐさの栗生ゑゐ子さん。

 

 

母乳について少しですが載ってるし、その他の育児に関する迷信についても書いています。第5刷が決まりました!

小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK‐間違った助言や迷信に悩まされないために

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「なぜですか?」、「どうしてそれがいけないんですか?」と聞いてみることも大事です。

もし合理的な理由を説明できなかったら、その人の助言を聞く必要はありません。

なぜ、まだ間違ったことや迷信を継承したがる人がいるのか私にはわかりませんが、悩まされない努力をしましょう。