抗体は自然に獲得すべきなのか?

先日、記事についたコメントにお返事していたらとても長くなってしまいそうだったので、コメント欄ではなくここでのお返事にしようと思います。 

 

nari

こんにちは。
こちらの本、私が初めて買った育児書本なので、私にとっても感慨深いです。優しいイラストに癒されています。

この度は、ワクチンと抗体について、お伺いしたいことがあります。
先日、身近な中年女性が、こんなことを口にしていました。

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「ワクチンだと、抗体が付かないことがある。だから、ワクチンよりも周りから病気を貰って育つ方が、結果的に丈夫な子になる」

 

ワクチンで得られる利益と、まともに病気に罹るリスクを比べたら、ワクチンの圧勝だと思っているので、この女性の主張は無視で良いと思うのですが、
ワクチンで抗体が付かない、ということはあるのですか。

妊娠中、予防接種を受けていても、風疹の抗体が無い女性がいることは耳にしていたのですが、同じようなことが他のワクチンでも起こるのですか。

 

予防接種の効果で良く耳にする、予防接種によって症状が軽くなる状態、というのは抗体が少ない(低い?)状態を言うのでしょうか。

勉強したいので、教えて頂けるととても嬉しいです。

nariさん、ありがとうございます。

コメントにはなかった、いらすとやさんのイラストをつけてみました。

 

まず一つ目の質問について。

Q1. ワクチンを打っても抗体がつかないことがあるか?

A.1 あります。私は子どもの頃、BCGを何度も受けました。なかなかツベルクリン反応が陽性にならなかったんです。産婦人科で次の子どもがほしいからと感染症の検査を受け、風疹抗体価が低いので、2回ワクチンを受けたけれども抗体価は低いままということもあります。また、例えば水痘は1回だけの生ワクチン接種だと1割の人が感染してしまうと言われています。だから定期接種になった際、3ヶ月以上の間隔をあけて2回打つということになりました。不活化ワクチンだったら四種混合は3回打った後、1年から1年半あけて4回目を打ちますね。不活化ワクチンは一回で充分抗体価が上がらないからです。臨床的に検査を積み重ねてベストな接種方法、つまり抗体が上がりやすい打ち方をしています。

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Q2. 予防接種により症状が軽くなるというのは、抗体が少ないということなのか?あるいは

どういう状態なのか?

A2. 感染を完全に予防するほど抗体価が高くないけれども、少し抗体があるということです。

例えば、感染を防ぐための充分な抗体価はないとはいえ、1回でも水痘ワクチンを打っていると罹った際に発疹の数はとても少なく、早くに保育園・幼稚園・学校に戻れます。登園・登校許可の基準が全ての皮疹が痂皮化するかどうかだからです。一般に水痘だと預かってくれるところはあまりないので、仕事を休んで家で見ていた親御さんも早く戻れます。なので感染予防には充分でない抗体価しかつかなかったとしても、予防接種は受けた方がいいのです。

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nariさんが聞いたワクチンよりも周りから病気を貰って育つ方が、結果的に丈夫な子になるというのは、アンチワクチンの人がよく言う理屈です。

彼らは勘違いしているんですが、予防接種あるいは医療の目的は抗体価を上げることではなくて、ひどい病気をしないということなんです。ワクチンを受けていると、全く罹らないか罹っても重症化することを防げます。

例えば麻疹にかかった際、抗体価はとても上がるでしょうけれど麻疹肺炎で呼吸状態が悪化し、死んでしまいましたでは困るのです。

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インフルエンザ菌bの感染症に罹り抗体価はとても上がってしっかり免疫はしっかりついたから、ひきかえに合併症で髄膜炎になったのは良かったと思いますか?インフルエンザ菌b感染症、ヒブは大変重症な細菌性髄膜炎を起こし亡くなる子ども、一生残る後遺症と生きていく子どもが以前は今よりたくさんいたんです。後遺症は残って歩けないし発達が遅れてしまうけれど、もう二度とヒブには罹らないだろうから良かったねとは普通、思わないのではないですか。


そして、感染症にかかったとしてもそれでついた抗体でさえ低下して二度、同じ感染症にかかることもあります。例えば、私は風疹に2回感染した男性を診たことがあります。3歳で罹っていたそうでお母さんに確認してくれました。この人にワクチンをすれば、さらに強い免疫が付いたはずでした。先天性風疹症候群もベビーは胎内に入る時に罹っているので、出生後に風疹にかかる可能性は低いでしょう。しかし、先天性風疹症候群になった方が、生まれてからワクチンを打たなくていいからbetterだという人はいませんね。

だからnariさんの言うように、感染して自然に獲得するよりもワクチンの圧勝なんです。

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 長くなりましたが、これから入園・入学というお子さんをお持ちの方、これから新しい環境で仕事だというフレッシュマンもワクチンは大事なので、ぜひ受けましょう。打ったかどうか、罹ったかどうか不明な時には打ってしまった方がいいです。

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