『新型コロナからいのちを守れ!』を読んで

8割おじさんと呼ばれている西浦先生の本を読みました。

 

厚生労働省のホームページに初めてCOVID-19のことが載ったのが2020年1月6日。

タイトルは「中華人民共和国湖北省武漢市における原因不明肺炎の発生について」でした。

それ以来、私達の生活はなんて変わってしまったことでしょう。

その数週間前から日本の感染症専門家西浦先生たちは、大きな変化になりそうな情報をキャッチしていました。

感染症数理モデルという分野があることを私は今回、初めて知りましたが、感染症患者の症状や感染者の広がり方から、病原体の性質を察知し、予防対策のためのいろいろなことを考えるものなんですね。

その感染症数理モデルの専門家がとても少ない日本で、西浦先生を始め研究者たちが奮闘する過程を書いた本です。

 

 

去年の今頃、私達はとても不安で恐怖を感じていましたね。

ダイアモンド・プリンセス号では恐ろしいことが起こっていて、そのうちに大災害が市中に広がるのではないか、もっと怖いものが海の向こうからやって来るのではと闇雲に心配したり、志村けんさんが突然亡くなり気分が落ち込んだりしました。

 

 

感染症患者の数や感染状況の情報が、専門家に集まらない中、なるべく正確に現状を把握して対策を立て、発表し、マスコミや市民とコミュニケーションを取るということがとても苦労が多く、奮闘している様子が書いてあります。

 

 

p212

政治の統率機能がちょっと厳しい状況になっていて、ほかの案件で政権が持ちこたえられなくなり、さらに感染症制御もうまくいかないとなったら、ものすごい社会不安が起こるのではないかと危惧しています。

中略

そのような思いに対して、きちんと怒りが鎮まるような、やり場のない思いが緩和されていくような、そんな手立てを考えていないのではないか。それどころか、布製マスクを配ったりしましたよね。あの時に尾身先生は西村大臣にマジ切れして怒っていました。「なんだあれは!あんなことにお金を使うのか」

 

まったくです。中枢にいる政治家が国民と同様、オロオロと翻弄されていてどうする?と情けなくなりました。

ja.wikipedia.org

 

緊急事態宣言、自粛要請、物資の買い占め、経済活動の縮小がいつまで続くのかわからない不安の中、西浦先生たちは悪者にされ殺害予告を受けます。

感染症の対策を取らなかったらこれだけの被害があるという予測は、うまく対策が取れて回避できると「あんな自粛措置はいらなかったのではないか」という説が必ず出てくるからです。

政治家が責任を取りたがらず、適切な相談もしないで勝手なことをするし、素人の見当違いな意見、実際のデータを知らない専門家風な人からの批判は、本当にやりきれないだろうと思います。

こないだも坂上忍がよくわからない専門家批判をしていたけれど、彼は分科会がどういう経緯でできたかも知らないし、政府とどう渡り合っているかもわかろうとしない。

こういう非難のための非難をする人は、とても多いのでしょう。

 

 

感染者の報告は保健所に上がるので、それを集計して、専門家に渡すのがそんなに困難なことかなと不思議に思うんですが、私には理解できない理由で西浦先生たちのところには入ってこないんですね。

政府の発表と誤差が出たら困るとかそういう些末すぎること。

そして、調査した内容を文章にまとめると、厚生労働省の担当の事務次官がそれを書き換え、専門家たちが厚労省の政策を支持しているような内容にする…

そんな状況で、尾身先生はかっこいい。

p228

フラストレーションがたかまって、厚労省とも仲違いしそうな時、週末の有志の会で、尾身先生がテーブルを叩きながら、先生より若い我々専門家全員を叱るようにおっしゃったんです。

厚労省がちびちび書き換えるとか、そんなしょうもない話はどうだっていいんだ。責任取れといわれるんだったら俺が取るぞ。お前たちはそんなもんなのか」「今は流行しているんだから、流行を止めるんでしょうが。お礼参りは終わったらちゃんとやるから、今はとにかく流行を止めるぞ」

 

 

尾身先生のかっこいいエピソードばかり引用したけど、西浦先生もかっこいいです。

(TдT) 感染症の専門家が集まる箱、若い研究者が育ったらその研究を活かせる場所である日本版CDCを早く作ってほしいと思います。

人と物が行き交う現代社会で、パンデミックはなくなるどころかこれから繰り返すでしょう。

それは経済の専門家や歴史家も言っています。

そんな世の中に生きている私達が、個人の将来を考えるためにもこの本とこないだご紹介した峰先生の本は必要。

yasumi-08.hatenablog.com

 

峰先生の本は編集者との対談をまとめたもの、今回の西浦先生の本は旧知の作家がまとめた本です。

余談だけど、この川端裕人さんの本は、私読んだことがありました。

 私はエイラ地上の旅人シリーズが好きで、ネアンデルタール、クロマニヨンに興味があります。

ホモサピエンス以外のヒトがいたらどんな世界だっただろうと想像しながらとても興味深く読みました。

山中さんのように、専門家の話をすばらしい理解力と予備知識を使って私達にわかりやすく伝えてくれる作家さんですね。

 

2回めの緊急事態宣言が東京などで出ています。効果的な予防策はだんだんわかってきているので、

yasumi-08.hatenablog.com

こういった方法を取りながら家で興味深い本を読むのはどうですか?