母乳について地域での支援

こういう本があるんです。

母乳育児支援スタンダード 第2版

母乳育児支援スタンダード 第2版

 

とても勉強になる。母乳の専門家でもある産婦人科医、助産師、小児科医が書いています。

NPO法人日本ラクテーションコンサルタント協会っていうのがあって、この本は国際認定ラクテーションコンサルタントの資格がある人達が書いているので、医学的に確かな情報。

母乳について指導しなくちゃいけない人たちが読む本だけど、一体誰に相談すればいいの!?っていう一般の人にもお薦めです。4400円+税でちょっとお高めだけど母乳相談室みたいなところに行くとしたら一回の施術料よりも安いでしょ。

 

それの母乳で困った時、誰に聞けばいいかっていう「地域での支援」という章は申し訳ないけど引っかかってしまった。私がこの章を書くとしたらやはりこれに近くなるんだろうとは、思う。決してこの章をdisる意図はないんだけれど、これはこれからの日本の課題です。

 

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母乳について困ったらまずは、身近な家族に相談するってとてもいいですね。がしかし、一番に出てくる、母乳については期待できないのではないか。出生前に「妻は母乳でトラブルになるかも」なんて考えて勉強したりはしないでしょう。実・義父母その他親戚も微妙では?そう思うのは身近な人に酷い事を言われて母が傷つくことがあるから。これは↓今読んでも、改めて酷い話が出てくる。

togetter.com

友人・近隣の女性に相談するのもいいかもしれないけど、医学的に確かな情報が聞けるとは限らない。家庭訪問で来る助産師・保健師でさえ「赤ちゃんの体重が増えすぎだから母乳を減らしなさい」なんて言う人がいる。母親同士の支援グループってどういうのだろう?近くにあればいいかもしれない。母乳相談室って、非科学的な、因習的な、都市伝説的な変なことを言うでしょう。

ググると母乳相談室のサイトって「◯◯を食べると乳腺炎になる」なんて、弊害にしかならないことが書いてある。(乳腺炎になる食物はないと「母乳育児スタンダード」にはある。)母乳外来がある病院、産院だったらいいかもしれない。

都道府県の助産師会、支援センター、IBCLCで開業している人に聞くのはいいかもしれない。でも、どうやって探せばいいんだろう?インターネット?保健センターに聞く?初めて子どもを持った人たちには、馴染みがないからどこに聞けばいいかわからないかもしれない。子どもが生まれてみたら思ったように母乳が進められなくて、焦るという状況でしょう。

次の医師ってやつはお薦めしません。小児科医・産婦人科医でちゃんと勉強している医師はいい。けれど患者さんは面と向かって確認できる?「先生、母乳について詳しいですか?」なんて。その2科でさえ、ひどい見当違いのことを言って母親たちを困らせる医師がいるのに、精神科医、歯科医……母乳のことを勉強したことがある医者はとても少ないと思われる。

栄養士、乳児健診の時に、私の病院では栄養士がロビーにいてお母さん達と話をするけれどその後、診察室に入って健診で話をするとあるお母さんが(´・ω`・)エッ?ってことを言われていたことがあった。栄養士の派遣元ミルク会社に「そういう医学的に根拠の無いことを当院で言わないで下さい。」と文書で抗議したことが私はあります。「母乳をあげている期間は和食の粗食」と言っていたんだけれど、それは彼女個人の考えであって医学的な根拠のない話。

保育士、どのくらい医療的に詳しいかな。「給食を食べなくなるから1歳を過ぎたら母乳はやめて下さい」って言う保育士がいると聞いたことがある。最近の保育士さんはちゃんと研修を受けていると思うけれど。

 

 

結論として、相談した相手がちゃんと医学的に根拠のある助言をしているかどうかの見極めはとても難しい。かくして新米母達は困ってしまうわけです。健診で泣く人もいてとても気の毒。

 

 

一方、イギリスでは女性が妊娠すると病院はこんなパンフレットをくれるそう。

イギリスの病院はほとんどが国立で、このパンフレットは国民保健サービスNational Health Serviceが出している。

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親ガイドというタイトル

 

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母乳の基礎

 

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母乳成功のためのコツ

 

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粉ミルクの基礎

 

他にも舌小帯とは、父親が知っておいてほしいこと(どうして母乳が大事なのかとか、父親は母乳をあげられないからスキンシップが大事とか)、産院から帰ったらどうしたらいいか、母親が気分が沈むことがあるのはなぜかなんて、新米両親がすぐに知りたい実際的なことが書いてあり、巻末には各種の連絡先がついている。

 

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母乳についてだけでも電話番号とアドレスがこんなに。

サイトを見てみたけれど「郵便番号を入力して近くの支援者に連絡を取ろう」みたいになってました。一対一で相談できるようです。羨ましい。

このパンフレットはめいろまさんこと谷本真由美さんに頂きました。ありがとうございます。

ご著書の英語の本もとても勉強になります。

添削! 日本人英語 ―世界で通用する英文スタイルへ

添削! 日本人英語 ―世界で通用する英文スタイルへ

 

 

 

こういうふうに誰もが、医学的に根拠のある、今現在で一番正しい情報が手に入ると、誤解や昔の習慣で母親が苦労しなくて済むわけですね。母乳を出すなんて怪しい商品が付け入る隙も減る。

 

 

そして今、最近少年Aの書いた本が話題だけど、私はその本よりも大原ケイさんの記事のこの部分にひかれました。

note.mu

 

アメリカは訴訟社会なので、納豆やらバナナやら食べたら痩せるというインチキなダイエット本を出せば、それでも痩せなかった人や健康を害した人たちから訴えられますし、◯◯でガンが治るなどと書こうものなら、それで家族を失くした人たちが黙ってないし、STAP細胞や殉愛も出版社にとってリスクが高いんで手を出さないようになるわけです。」

 

 

日本もそうだったら、あんな変なニセ医学本がはびこらないのに。本ばかりでなく、一応国家資格を持った助産師がこんなことを患者さん達に言うのが日本。

togetter.com

 

訴訟社会というのは日本ではよく思われないけれど、こうやって無責任な”指導”が許されるのはよくないでしょう。やっぱり、変なことを言っている人がいたらただすべきではないですか。

 

 

以前、ハフィントン・ポスト日本版に書いた記事。言われた当事者が声を上げないと状況は改善していかないんじゃないかな。

www.huffingtonpost.jp

医療費は先進国の中で少ない日本だけれど、政府・財務省は増えていく医療費を削減するために日本の医療費は高い高いと毎年、繰り返しています。でもね、国が確かな情報と相談先を国民に示してくれたら不要不急な受診が減って、結果的に医療費は減ります。厚労省はトンデモ情報の排除と共に、こういう啓蒙活動をしてほしいです。

 

 

 

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