ビタミンC点滴

私が最近、好きな元アナウンサーの書いた本を楽しく読んでいたところ、ちょっと気になる部分がありました。「疲れを取るために定期的にビタミンCの点滴を受けている。美白にもいいらしいしお薦め。」だというんです。疲れは主観的なものなのできっと疲れが取れた気分になるんでしょう。だけど、効果を誤解していると思うし読者に薦めちゃダメ。そう言えば、テレビで別のタレントさんも睡眠不足の時にビタミン注射を受けると言っていた。

 

ビタミンCは人が生きていくには必要で、壊血症の時には大量に必要である。しかし、大量のビタミンCによる治療は代謝性疾患の原因になるかもしれない。ビタミンCは風邪の予防、傷の治癒、ガンの治療に効果があるという説があるが、科学的な根拠は示されず、いくつかは有害でさえあるという↓論文。

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 こちらはもっとよくない。大量のビタミンC点滴は食後のインスリン反応性が遅くなるという話。糖尿病の人は病態が悪化しそうです。↓

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

薬が本当に効果があるかどうかというのは、検証する手順があります。

 

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●薬効薬理試験 どれくらい与えると効果があるか、どのような方法で使用するかなどを調べる。

●薬物動態試験 体内でどのように吸収され、分布し、排泄されるかなどを調べる。

●安全性薬理試験 大量投与されたときなどに主な生理機能に対して医薬品としてどのような望ましくない作用があるのかを調べる。

●毒性試験 げっ歯類やイヌ、サルで急性、亜急性、慢性毒性試験を実施する。また医薬品の特性に応じて、がん原性や依存性などの毒性試験が必要となる。

 

これにまず、3-5年かかる。

 

 

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●治験 ヒトを対象に行う試験。

●第I相(Phase I) 同意を得た少数の健康人志願者を対象に、安全性のテストを行う。

●第II相(Phase II) 同意を得た少数の患者を対象に有効で安全な投薬量や投薬方法などを確認する。

●第III相(Phase III) 同意を得た多数の患者で、「二重盲検試験」などにより、既存薬などと比較して新薬の有効性および安全性をチェックする。

 

これにまた3-7年。

 

 

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●承認申請 医療上の有効性と安全性が確認された新薬について、製薬企業は厚生労働省に製造販売承認の申請を行う。これを受けて厚生労働省は総合機構における審査にかけ、その結果をもって、厚生労働大臣の諮問機関である薬事・食品衛生審議会に諮る。審査をパスしたものには、厚生労働大臣から製造販売承認が与えられる。

●審査 承認申請資料の審査は、医学、薬学、生物統計学などの分野別の専門官によるチーム審査が行われ、さらに臨床家などの立場からの専門委員の意見を踏まえ審査報告書が作成される。

 

これに1-2年。

 

 

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●薬価基準収載申請 製薬企業は製造販売承認が与えられた新薬について、薬価基準収載の申請を行う。

 

 

http://www.nibio.go.jp/guide/top.html ←参考はこちらと

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1030-8c.pdf ←こちら

 

 

こうして薬の値段が決まり医療機関で使われたり、処方されたりします。

 このように効果が科学的に検証されたものが、適切な価格でしか使用できないようにしている法律が医薬品医療機器等法(旧薬事法)。どういう疾患・病態に薬を使用するかということも決まっています。だから、抗生剤を風邪という診断名で処方できません。適応外のため。

それから「ゴマ由来のこの製品が若返りに効く」なんて言ったら医薬品医療機器等法違反。効果効能を謳ってはいけません。

民間療法やテレビで紹介される健康によい食べ物も、この手順を踏んでいませんね。

ビタミンCはちゃんとした医薬品ですが、適応はビタミンC欠乏症の予防・治療、ビタミンCの需要が増大し、食事からの摂取が不十分な際の補給。薬物中毒、副腎皮質機能障害、骨折時の骨基質形成・骨癒合促進。肝斑・雀卵斑・炎症後の色素沈着。光線過敏症皮膚炎で薬価は100mgも500gmも1バイアルで86円。

これ以外の病態で使用する場合は、健康保険が使えないので自費です。また、食事できる人には内服のビタミンCしか健康保険は適応しません。

 

だから前述の元アナウンサーさんは、医薬品医療機器等法による検証方法を経ていない症状に効果があると信じて、ビタミンCの原価86円+溶解液150円+留置針210円+輸液セット500-1000円に技術料を加えても高すぎる”治療”を定期的に受けている。

ビタミンCなら食事で摂ればいいのにね。キウイ1個で1日に必要なビタミンCの70%が摂取できます。

 

 

すてきな人、憧れている人がビタミン注射、美容点滴をしてるって聞くといいなって思うかもしれない。けれど、高いんだから、痛い思いをしたから効いたはずというプラシーボ効果以上のものはないでしょう。睡眠不足は眠るしかない。

 

イーディ―’60年代のヒロイン

イーディ―’60年代のヒロイン

 

 

昔、読んだこの本にも美容と疲労にいいという注射をイーディ達、格好いい最先端を行く人たちが受けていたけれど、退廃的で医者の拝金主義による習慣だったと思う。

 

 

こういったこと、医者ならみんな知ってます。普通のことだから、敢えてどの医者もみんな言わない。Twitterで昨日、言ったらものすごくRTとファボされたので、記事にしてみました。

 

 

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