『Dr.KIDの小児診療×抗菌薬のエビデンス』『そのエビデンス、妥当ですか?』を読んで

これも少し前に出版されて送って頂いた本です。 

【もくじ】Amazonより
1世界からみた日本の抗菌薬の使用状況
2世界からみた日本の小児の抗菌薬の使用状況
3不適切な抗菌薬を処方する理由と各国の抗菌薬適正使用の試み
4小児の急性上気道炎と抗菌薬
5小児の溶連菌感染症と抗菌薬
6小児のマイコプラズマ感染症と抗菌薬
7小児の急性胃腸炎と抗菌薬
8小児の下気道感染症と抗菌薬
9小児のインフルエンザ感染症と抗インフルエンザ薬
10小児の急性中耳炎と抗菌薬
11小児の皮膚感染症と抗菌薬 

 

こんな感じで医師向きです。

帯に「日本の小児への抗菌薬処方は世界最低レベル!?」とあったのを私はいいことなのかなとぬか喜びしていました。

先進国で、抗菌薬(抗生剤)の適正使用率が最下位だった。

ショックだなあ。

でも私が研修医のときと比べるとぜんぜん抗菌薬を処方しなくなったし、患者さんの保護者もほしいと言わなくなったんだけどと思い、読み進めました。

ご存知の通り、風邪のほとんどがウイルスによって起こります。

ウイルスに抗菌薬は効果がありません。

だから、小児科を受診する子は圧倒的に未就学児・風邪が多いので、ほとんどの子に抗菌薬は必要ありません。

昔は発熱していたら抗菌薬という感じでした。

きっと日本も良くなっているけれど、海外の特に先進国ではもっと適正使用が進んでいるんでしょう。

薬剤耐性(AMR)対策のサイトを貼っておきます。

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ペニシリンは、子どもに溶連菌感染症を起こすA群化膿性溶血連鎖球菌が耐性を持っていない上、リウマチ熱の予防効果が証明されているなど書いてあると心強いです。

安易に広域な(数多くの菌に効くということ)セフェム系抗菌薬を出さずに、スタンダードな処方をしようと改めて思いました。

 

以前、勤務していたところでは、近所の耳鼻科がクラリスマクロライド系抗菌薬)をなんにでも処方して、効かないとメイアクト(広域セフェム系抗菌薬)というのがパターンで困りました。それがダメだとオゼックス(ニューキノロン系抗菌薬)。

耳鼻科医のAMR対策はどうなっているんだろう?

 

 

『Dr.KIDの小児診療×抗菌薬のエビデンス』の少し前に出たのはこちら。

【もくじ】Amazonより
1 小児の咳止めの科学的根拠
2 小児の気道感染症と去痰薬の科学的根拠
3 抗ヒスタミン薬の科学的根拠
4 小児の咽頭炎とトラネキサム酸,咳と気管支拡張薬・ヴェポラッブ®の科学的根拠
5 解熱薬(主にアセトアミノフェン)の科学的根拠
6 整腸剤(プロバイオティクス)と小児の下痢の科学的根拠
7 止瀉薬の科学的根拠
8 制吐剤の科学的根拠
9 科学的根拠から見た小児のかぜと鼻洗い・鼻吸い
10 小児のかぜとロイコトリエン受容体拮抗薬の科学的根拠
11 科学的根拠から見たかぜの自然経過

 

これもすごい本ですね。

私は、クリニックの処方を決めるのにこの本も参考にさせていただきました。 

 

「咳止め」は咳が止まるエビデンスが不十分だし2歳未満に使用を禁じている国が多い。

第1世代抗ヒスタミン薬は熱性けいれんを起こさせたり、痙攣の持続時間を長くしたりするのに市販の総合感冒薬のほとんどに入っている。

下痢止めはイレウスや傾眠という副作用がある。

などなど、小児科医は割と知っていても大人しか診ない内科医、耳鼻科医、皮膚科医は知らずに処方していることがあります。お薬手帳でしかも小さい子に錠剤で出されていたりすると残念です。

子どもを診察することのあるすべての医師は読んだほうがいいと思います。

この本もとてもいい、読むべき本。

子どもの風邪 ー新しい風邪診療を目指してー

子どもの風邪 ー新しい風邪診療を目指してー

  • 作者:西村龍夫
  • 発売日: 2015/08/31
  • メディア: 単行本
 

 

 

もう半年くらい医師の勉強会、研究会など集まって講演を聴く機会がありません。

withコロナ、アフターコロナなんて言われてオンラインでの勉強会は開催のお知らせが入るようになりました。

そんな状況だから、抗菌薬を適正に処方するには、小児科医はこういった本を読むのもいいと思います。