ワクチンについて学ぶなら

本を2冊読みました。

そして驚きました。 

反ワクチンの考え方は、昔から繰り返されていて、発想もその後の行動もパターンがあることに。 これを読むと日本で今、ワクチンに反対しているあの人もこの人も、似ている人が出てきます。むしろ、オリジナリティがない。

反ワクチン運動の真実: 死に至る選択

反ワクチン運動の真実: 死に至る選択

 

 

子どもができて考えた、ワクチンと命のこと。

子どもができて考えた、ワクチンと命のこと。

 

 

 「反ワクチン運動の真実:死に至る選択」、1796年にジェンナーが初めて天然痘ワクチンを発明した話が出てきます。「天然痘で死んだ人の数は、黒死病の死者と20世紀の戦死者を合わせたよりも多い。5億人がこの病気で死亡しているのだ。」とあります。根絶されてよかった。

 

しかし、イングランド政府の種痘義務化が反ワクチン運動を引き起こします。人々が予防接種を受けない理由は、「経済的に困窮している層の知識がないため」という認識だったことから、まさに上から目線で、強引にワクチンを打たせようとしました。

 

当時、天然痘ワクチンである種痘は、親が安心できるほど安全ではなかった。そもそも天然痘ウイルス自体が、哺乳類に感染するウイルスの中では最大のサイズ。200種類以上のウイルスタンパク質を含んでいて、当時のワクチンは生ワクチン。精製技術もなかったので、副反応に親たちは今よりもずっと不安になったことでしょう。

 

一方、現代のワクチンは14種類あるけれど、免疫成分は総数で約160。100年前の種痘は1種類だけで免疫成分が200種類以上だったから、それだけでも不安要素は少なくなっています。

ワクチン添加物もホルムアルデヒドは、車の排気ガスや紙袋やペーパータオルなどに含まれるものよりもずっと、ワクチンに入っているものの方が少ない。水銀やアルミニウムも、子どもたちは環境からより多く体内に取り込んでいます。

今はワクチンが可能な限り安全なものになっているし、イングランド政府のように強制ではありません。予防接種のために被害が起きたとき、予防接種法独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)で救済されます。

 

私が反ワクチン運動は繰り返しなんだ…と感じたのは第7章の小見出し。こういう考えから、予防接種に反対している人は現代にも多い。

医師は邪悪であるという考え 医者は金儲けがしたいからワクチンを勧めるという人。本当は医者も製薬会社も感染症が流行ったほうがお金は儲かります。

ワクチン被害の誤った主張 「牛痘で牛になる」、「四足で走り回る」、「屈んで草を食べるようになる」などあったそうです。笑いましたが、笑い事ではないですね。その後にも「自閉症になる」など、新しく「ワクチンのせいだ」という説が、現れては否定されています。

ワクチンは反自然だ こういう場合の「自然」は、とても恣意的に使われる。人が衣服を着るのは自然で、ワクチンを受けるのはアンチワクチン派にとって「反自然」。私は天然痘がまだ猛威を奮っていたほうが自然で、より良いことだとは思いません。

細菌説の拒絶 ワクチンができたのが先で、なぜ効くのかは後からわかりました。わかるまでの間、「細菌のせいで感染症が起こるのではない」とか、「耳の聞こえが悪い人は背骨がずれていたせいでカイロプラクティックで治った」とかいう説があったそう。今もありますね。天然痘や麻疹がワクチンのおかげで減ったのではなく、自然に減ったのだという説。嘘です。

 

第11章にCDCのロバート・チェンが「予防接種事業の自然史」というグラフを作った話があります。残念ながらグラフは本に載っていませんが、 こんな内容。

第1期 人々は感染症を恐れているので、1940年代、親はジフテリア・百日咳ワクチンを快く受け入れた。破傷風、ポリオ、麻疹、おたふく風邪、風疹ワクチンもほとんどの子どもに打っていた。病気になったときの子どもを実際に見聞きする人が大多数だったから。

第2期 ワクチンによって感染症が劇的に減る中で、実際には存在しなかった副反応に注目が集まり、予防接種率が横ばいになる。

第3期 ワクチンの恐怖がさらに高まり、予防接種率が下がる。予防可能なはずの病気にかかる患者が増える。アメリカが今、この段階だと書いてありますが、多くの経済的に豊かな国々でそうです。

チェンのこのグラフの最も心痛む段階では、下がるワクチン接種率問題の解決をするのは予防接種を受けていない子どもたちだ。予防できる病気での死亡がとても増えて、親は再びワクチンに癒やしを求めることになる。

1800年代のイングランドの反種痘運動、1970年代のイギリスと日本での百日咳増加、1990年代イギリスとアイルランドMMR自閉症を起こすという虚偽の主張で麻疹の増加、2009年にはミネソタペンシルバニアでは細菌性髄膜炎が増加。繰り返しですね。

 

 

そして「子どもができて考えた、ワクチンと命のこと。」は、医療関係者でなく、ある女性が子どもを持って初めて考え、調べたことがまとまっています。

住民の麻疹ワクチン接種率が低い地域と、住民の大部分がワクチンをしている地域とで調べたもので、前者の地域でワクチン接種を受けているにもかかわらず麻疹にかかるケースの発生率は、後者の地域で非接種者が麻疹にかかるケースの発生率より高かったというのだ。

 この話が印象に残りました。つまりこういうことです。

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周囲の人の多くがワクチンを受けていると、受けている人自身も、受けていない人も守られます。先天性の免疫不全・免疫が弱くなる病気や治療をしている人が守られるのはとても大事なこと。実際には、存在しないワクチンによる不利益を恐れてワクチンを打たない人も、このように感染から守られます。

 

この本に出てくるボブ先生ことロバート・シアーズ医師の「現行のワクチンは多すぎるし早すぎる」という主張が、たいへん無責任。スイスからアメリカへ麻疹を持ち帰ってしまった子どもの責任を取らなかったことも、医師として大変よくない。シアーズ医師が家庭医だったのに。

ドクター・ボブはMMRワクチンを不安に思う親に向けてこう助言しているのだ。「その不安を近所の人と共有しないほうがいいでしょう。多くの人がMMRワクチンを避けるようになったら、病気はあっという間に戻ってきますから」

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ドクター・ボブはフリーライドを勧めているということ。周りの人にワクチンを打ってもらって、自分は不安を感じるから子どもに打たないということを肯定しています。ロバート・チェン医師の第3期になった途端、妊娠中の人、病気などでワクチンを受けられない人、小さい子どもが感染の危険にさらされます。

 

 

私のクリニックでも、知識のある勉強家であるからこそワクチン懐疑的という親ごさんがいます。もっと医療を拒絶する人は、そもそも医療機関に来ていないので、反ワクチンの人の実数はわかりません。ホームページを見てわざわざ遠くから、迷っているワクチンの相談にいらっしゃる人もいます。来てくれたら長い時間がかかりますが、説明をしています。でも、自分で勉強しようと思うとネット検索でおかしな説、主流でない変な本ばかりがヒットしますね。

 

予防接種、ワクチンについて知りたいという人がそういう本を手にとってしまうのは仕方のないことです。ワクチンは危ないという本を読んだら、次はこういったワクチンの史実や歴史が載っている本、ワクチンは大事だという市区町村でもらうパンフレットなどを読んでください。

 

 

 

シアーズ医師がカリフォルニア州で懲戒処分を受けた記事。

respectfulinsolence.com

日本も医師会による処分だけでなく、厚労省警察庁などが罰してほしい。

 

シアーズ医師が保護観察下に置かれたというニューズウィークの記事。執行猶予を受ける可能性が高いため、裁判になることを避けるために、医療委員会との和解を受け入れたとFacebookに投稿している。

www.newsweek.com

シアーズ医師は、保護観察中でも診療を続けることが許されますが、保護観察期間は毎年ごとに40時間の医学教育訓練に加えて倫理授業を受ける必要があります。この間、彼は別の医師によって監視されます。