以前はほんとうにひどい内容の医療本ばかりが目について、いくら出版業界が斜陽でもこれはないと思っていました。
それが最近は売らんかなのトンデモではなく、正しい知識が書いてあり世間で流布している説に根拠がありませんよという医師の本が出版されるようになりました。
宋先生の『生理だいじょうぶブック』は月経が始まったばかりの小中学生が対象の本。
でも、大人が読んでも「へー!」という人がいるでしょうし、男女を問わず子どもに質問されたときにうまく答えられます。
ルビがふってありマンガがほとんどで読みやすい。
例えば、なぜオリモノが出るのか(自浄作用のため)、生理痛は病気ではないからガマンするべきなのか(産婦人科に行きましょうなぜならば…)といったことです。
プールの中では経血は出ないけれど、プールサイドでは出てくる可能性がある。「できれば生理中、水泳はお休みしたほうが」いいと書いてありますが、「できれば」です。
もちろん、泳ぎたい場合もあると思うのでそれに関しては、江夏先生のこちらが詳しい。
月経のことばかりでなく、下着の種類や選び方、気になる毛が増える問題、LGBTやSOGIについても書いてある。
お子さん自身や、お子さんに説明する機会がある人にオススメです。
これも宋先生の大人が読むような本。マンガと文章でこちらも楽しく読めます。
そもそも私達大人も学校で性について詳しく習うことがなかった。
なぜなら、
学習指導要領で「性交」や「避妊」という言葉は使わない取り決めになっている
p11
それで、日本の性交同意年齢は13歳っておかしすぎると常々思っています。
教えられたことがないのに死ぬほど強く抵抗しなければ、性交に同意していたとされ、強要した方が罪に問われないのは日本の教育も司法もおかしい。
p52バースコントロールとかリプロダクティブ・ヘルス/ライツについて知らないから女の子は空気を読まざるを得ない。
これは本人だけでなく、家族、日本全体にとって残念なことです。
デートDV、痴漢などから子どもを守りたい、ピンチのときに頼ってもらえる親になるにはという部分は男女を問わず多くの人に読んでほしい。
HPVワクチン、性の多様性、自傷に関しても載っています。
私も先日、娘に体のこと性のことを説明しなくちゃいけなかったんだけれど、またそういう機会があったらこの本をもとに、またトライしてみようと思います。
3冊目は太田先生の本。
イラストと文章でこちらもとてもわかりやすい。
そもそも体の作りはどうなっているのということや、月経周期や正常な月経・異常な月経はどういうものか、妊娠に関することが書いてある。
未受診の人には「産婦人科って怖い」というイメージがあると思いますが、どういう診察台で、どういう器具を使って診察するか、なにを診るのかということがわかると不安が減るでしょう。
そして、タイトルにもある子宮頸がんについて、これもそもそもどういう癌なの?ということやHPVワクチンはどうやって子宮頸がんを防ぐの?ということが網羅的に説明されています。
私もワクチンの本でHPVワクチンについて触れましたが、
太田先生の本は、HPVワクチンに特化してとても詳しい。子宮体がん・頸がんが1960年からものすごく死亡者数を増やしていることを知ったら、ワクチンで予防できるものは予防!と感じられるはず。
なぜかHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)に反対する人たちは、ワクチンは副反応が怖いから受けずに、検診で早く見つければ十分と言っていますが、日本の子宮がん検診は海外と比べてとても受診率が低く、ワクチンと検診は両輪であるべきです。
Amazonなどのネット書店やリアル書店に行くとものすごくたくさんの本が並んでいますが、医師から見ると「あーあ」と思うようなトンデモ本がちゃんとした本を圧倒する勢いがまだあります。
この玉石混交から正しい知識を得てもらうには、玉を増やすというのも一つの方法。
Amazonだと一回石に当たるとその後もアルゴリズムによって類書を勧められたりして、知らないうちに知識が偏ります。
この3冊は特にお勧めです。