緊急時、周囲に輸血を募ること

前回の記事、はてブコメントがいっぱいついて数人がちょっと誤解があるかな?と思う部分があるので、続きを書きます。

 

まず事故の際「同じ血液型の人、集まってください。」ってことは、実際にはありません。

日本で輸血製剤を作る日本赤十字社は、安全な血液の供給のためにこんな努力をしています。

www.jrc.or.jp

  • 血液型検査:ABO血液型検査、Rh血液型検査、不規則抗体検査、HLA検査(一部)
  • 抗原・抗体検査:梅毒血清学的検査、B型肝炎ウイルス検査(HBs抗原、HBs抗体、HBC抗体)、C型肝炎ウイルス検査(HCV抗体)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)検査(HIV-1、2抗体)、HTLV-1抗体検査、ヒトパルボウイルスB19検査
  • 核酸増幅検査:B型肝炎ウイルス検査、C型肝炎ウイルス検査、HIV検査
  • 生化学検査
  • 血球計数検査 

 

これらを検査してから血液製剤にしますが、特に大事なのは感染症ライシャワー駐日大使の輸血後肝炎は、ご存じの方も多いと思います。このように多項目のチェックを受けて最後、患者さんに輸血する直前に放射線照射をします。供血者のリンパ球が受血者を攻撃する免疫反応、GVHDの予防をするためです。

だから患者さんに輸血する際、「私の血を使ってください!」とご家族に言われる話は実際に経験があるけど、こういう理由で血液は日赤と同程度のチェックを受ける必要があること、近親者間の輸血は、GVHDのリスクが高めることをお話して血液製剤を使います。

 

 

ヘルメットはあまりに普通に血液型の欄がある商品が多くて思わず描いてしまったんだけど、子ども用の名札の絵にすべきでした。私の前回の記事は子どもの書類、持ち物に書き込むためにわざわざ採血するのは必要ないという話なんで、危険性の高い職場の方が既知の血液型を書くのは別の話。ミスリードになり得ました。ごめんなさい。

 

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事故で輸血する場合、医者が患者さんのクロスマッチ用検体とともに◯型のMAPを何単位、FFPを何単位と書いて(or 入力して)オーダーします。血液型がわかっていたらそれを書くし、わからなかったら未検あるいは不明。そこで自己申告がO型だったのにクロスマッチの結果、実はA型だったら紛らわしいですね。

そのため、出生直後の赤ちゃんの時に産婦人科で採血することは減ったんです。産婦人科クリニックなどのサービスだったのではないかと思うんだけど、赤ちゃんの血液型判定は間違えやすいので輸血するのでなければ必要がありません。

 

 

そして、事故が起きて周囲にいた人から血液をとってそれを輸血しなくてはいけない状況というか、それが可能な状況だったら器材もあるはずなんで、生食やアルブミン等を輸液しながら日赤の血液製剤を待ったほうがずっと安全。日赤、24時間対応です。偶然一緒にいた人に提供をお願いして前述項目をチェックしているよりは血液製剤を待ちます。

 

 

それから近親者が希少な血液型だったら、自分もそうかどうか調べたほうがいいかという質問を頂きました。それがRh(-) ということだったら血液型は常染色体劣性遺伝なので、Dd、Ddの両親からddのRh(-) の人が生まれる確率は四分の一です。兄弟姉妹くらいだったら検査してもいいかもしれません。でも輸血する機会ってそうそうないし、緊急時でもRhは見るし、「私の兄弟はRhマイナス。」という情報だけで大丈夫です。

予定を組んでの手術だったら必ず術前に血液型検査をします。輸血後や産後は不規則抗体ができている可能性があるので、輸血のたび、お産のたび、再度血液型検査をします。

それ以外にも希少な血液型はたくさんあるんだけど、臨床的に問題になるのはABOとRhなので、個別には血液を専門とする医師に相談がいいと思います。

私は同級生とかに相談してます。

最後に、血液型ぐらい親が知りたいんだからやればいいのに、毎回必要がないことを医者が説明するのはお節介という意見もあったんだけど、小児科医というのは子供の立場になってアドボケイトするのも仕事。言われるまま検査したら収入になるけれど、それは医療ではない。新生児科や、まだ話せない子を相手にする医者はそういう習慣がついている。子ども自身が納得している場合はどうするかケースによるだろうけれど、できれば必要のない侵襲的処置はやりたくないっていうのはこういう仕事を選んだ人の特徴なんだと思います。

yasumi-08.hatenablog.com

 

 

 

 

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