昔から、斎藤学先生の本は好きで私は何冊も読んでいました。
私の本や専門医ママシリーズ、『産めないから、もらっちゃった』を作った編集者のO西さん
(仮名)も斉藤先生ファンだったようで、彼女が素晴らしい本を作りました。
とても興味深い。
今は「毒親」ブームなんですって。元々はこの本がきっかけです。
文庫本になる前、私もこんなにひどい親がいるんだと驚きながら読んだものです。
ここでの毒になる親は、子どもに対して不適切な接し方をして、子どもの
心身を蝕む親という意味。
日本でも、あるだろうなというかむしろ「あなたのため」を装って支配する親は、
世界中どこにでもいるという恐ろしい確信を持った本です。
この本以来、次々と「私はこんな育てられ方をしました」という悲惨な話が
世の中に出てきて、心が痛みます。
私が小児科医としてできることはないかしら。早期発見?
そして、この『「毒親」の子どもたちへ』は、そういった環境をサバイバルした
子どもたちが、その先の人生をどう歩くかという本です。
その前に、それ本当に毒親?という話も出てきます。
毒親のせいで自分はこんなだと、斎藤先生のところにたくさん言いつけに来る人が
いるそうで、それはなんでもかんでも自分がうまくいかない時の言い訳じゃないの?です。
アダルトチルドレン(AC)を日本に初めて紹介した斎藤先生ですが、ACも
ブーム後半、誤解され言い訳に使われていた感がありますからね。
この本↑のSPA! 連載当時、親をとても悪く言う人が出てきて中村珍さんが
客観的に見て親がそんなに悪くはないんじゃ?っていうところを読んで
笑ってしまったのを思い出しました。
毒親なんていないと言っているんじゃありません。
本当に酷い、どうしてそんなことができるのか?と震撼するような育児環境は
残念ながら確かにあります。
しかし、過去に起こったことを変えるのは誰にもできないので、親の責任を
糾弾することにエネルギーを使うのではなく、見方の幅を持とう、こういうふうに
見るのもいいよということが『「毒親」の子どもたちへ』に書いてあります。
毒親に育てられ、生きづらくてもある日いろいろなことが好転する場合があります。
「p87 変化は、親が変わったから起こるわけではありません。毒だった親から
毒が抜けてきたのではない。子どものほうの、親に対する見方が変わるのです。
これが大人性の始まりではないでしょうか。」
そうなんでしょう。
この本は↓「毒親」という言い方ではないけれど「ちょっとそれは私が子どもだったら
つらい。」というご両親が出てきます。
でも、この本に出てくる世の中で成功した方々は、自分の育てられ方に拘泥してはいないん
です。 「毒親」を心の中に取り込んで、「インナー毒親」として自分で自分を厳しく
責め立てる話も斎藤学先生が書いていますが、そういうことを乗り越えないと、
本当の自分のやりたいことや自分自身の幸せというのは手に入らないのでしょう。
表紙の絵を描いた内田春菊さんが、帯でこう書いています。
「斎藤先生が私やあなたの話に見出しをつけてくれると、あっというまに次のページや
次の章に進めます。それは人生と時間の大いなる節約なのです。」
詩的な、素敵な表現。
「毒親」に育てられた人も、そうでない人も生きづらさを抜け出す方法を示してくれる本です。
だって、「p90 あなた方は、一人ひとりで生きているつもりかもしれないけれど、そうじゃない。
人は人間関係という水の中でしか生きられない水棲動物みたいなもので、これを欠いては生きられない。」のだから。
今まで斎藤先生の本を読んできた人には、AC、機能不全家族、インナー親などの
キーワードがつながって、謎解きのような楽しさもある♪
初めて読む人にも役に立つ本です。