アルテイシアさんに『自分も傷つきたくないけど、他人も傷つけたくないあなたへ』を頂きました。
フェミニズムについて多く語っている本です。
それだけにとどまらずジェンダーの問題、ハラスメントとそれに対する対策、アサーティブネスなど時代に合った考えを知ることのできる一冊。
私は毎回、Webのコラムを楽しく読んでいたので、またもやまとめて読み直すことができて面白かったです。
以前に頂いた本について書いた記事はこちら。
『自分も傷つきたくないけど、他人も傷つけたくないあなたへ』Amazonより
(目次)
第一章 「繊細すぎる」という言葉に傷つくあなたへ
1 ジェンダーを学んで生きやすくなろう
2 ジェンダー感覚をアップデートさせる秘訣
3 心と体を傷つけられないための護身術
4 好きなおでんの具はなんですか--ハラスメントをなくすために
第二章 うっかり誰かを傷つけたくないあなたに
1 「○か月だったらもうしゃべるの?」--相手のつらさに寄り添うために
2 「そんなの普通だよ、大丈夫だよ」--苦しみを無視しないために
3 「〇〇なんて関係ないよ」--自分の特権に気づくために
4 「老後は沖縄に住みたいな」--無邪気に消費しないために
第三章 パートナーのジェンダー問題に悩むあなたへ
1 アサーティブな対話で夫婦円満ライフハック
2 「拙者のトリセツ」を作って夫婦円満ライフハック
3 ジェンダーの話になるとケンカになる問題
4 夫と子育てするのが無理ゲーすぎる問題
5 夫婦の家事問題を解決するライフハック
6 男性育休取得のためのライフハック
第四章 ヘルジャパンで傷ついた女子のお悩み相談室
1 恋愛経験ゼロだけど幸せな結婚がしたい
2 喪女歴が長すぎて婚活がうまくいかない
3 痴漢されてから婚活意欲が激減してしまいました
4 ジェンダーイコール男子はどこにいる?
5 発見! ジェンダーイコール男子はここにいた
特別対談 小島慶子さん×アルテイシア 「ジェンダーを知ればやさしくなれる!」
第一章はハラスメント・差別というものはというイロハから。
悪意のない人がやることだという部分に納得です。
パワハラ上司は指導のつもりだったと言い、DV親はしつけのつもりだったと言い、体罰教師は教育のつもりだったと言い、セクハラ政治家は場を和ませるつもりだったと言う。
彼らは「相手のためを思ってやったのに、なぜ自分が責められる」「責める方がおかしい、自分は間違ってない」と思っている。
だから、テンプレのご不快構文を出してすまそうとするのだ。「不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」は、屁をこいた時に使う言葉だ。
----中略----
「自分は差別なんかしてないけど、そっちが誤解したなら形だけは謝りますよ」という本音が透けて見える。受け手側の問題にすり替えて責任逃れするんじゃなく、自分の中にあるアンコンシャスバイアス(無意識の偏見や差別意識)と向き合うべきだろう。
あの人たちは一様に同じ謝り方をして、なぜ問題になったのか本当には理解していない。
だから、私たちは嫌な印象を持ったまま許せないと思うんですね。
第二章は、ジョンとジェニファー実験の話が載っています。
同じ経歴書でも男性名にするか女性名かで、受け取る側の印象が変わり、提示された年俸までまったく違ってしまうというもの。
こういうバイアス、偏見、差別があるのに、優遇されている側が「僕が成功しているのは男性だからではなく能力があるから。君は努力が足りないし、責任を雇用者に押し付けているんじゃない?」と女性に言ったら大間違いですね。
特権を持っているということは認識しづらいもの。
差別を感じずに生きているということは、知らないうちに下駄を履いているのかもしれません。
日本で生まれた日本人男性で、勉強も運動もできて人生を勝ち抜いてきた人でも、海外ではマイノリティになることの方が多いでしょう。
本書にあるように、ドイツで「私はアジア人に偏見がないから、あなたと友達になりたいわ」と言われるなんてことがあったらモヤりませんか?
これは↓本書中に出てくる実験。
徒競走で買ったら100ドルをもらえるということで若者が並んでいます。
「両親が今も結婚している人は2歩前へ」、「私立の教育を受けた人」、「ご飯の心配をしたことがない人」…と、出された条件に合う人はどんどん前に出てゴールが近づきます。
スタート地点に残っているのは、本人の努力ではどうしようもないことで不利益を被ってきた若者。
後ろを振り返るといかに自分が特権を持っていたかがわかる、バイアスを見える化する実験ですね。
この動画の2歩ずつ進み続ける子達は、途中でどういう意図のある指示か途中でわかりそうなもの。
一部の子は神妙な顔になったり、残されているライン上の子は悲しそうな顔になっていたりするのに、一部の子はニヤニヤしていてなんなの?アホなの?と思いました。
うっかり差別してしまうと、周囲からこんなアホに見えてしまうんですね。
私も気をつけようと思いました。
この本は、アルテイシアさんがウートピ「モヤる言葉図鑑」、幻冬舎plus「アルテイシアの59番目の結婚生活」、「Curet」、「婚活あるある」で書いたものをまとめたものです。
連載時にはいろいろなことがあり、あるアイドルが性被害で笑いを取るような作品を作って問題になりました。
自分の推しがこんなに残念なことを言っていたら、なんて人の気持ちがわからないんだ!と悲しくなります。
ファンを辞めたくなりますね。
アップデートできていないのは、人気商売に致命的。
「私に監修を任せてくれたらいいのに。報酬は千円でいい」とコラムでも書いていたアルテイシアさんが、この本が出た現在は学校で講演をしている、そしてそれを聞いた若い子たちの感想が熱い…それを読んだ私も胸熱でした。
そういうわけで、この本はフェミニズム、ジェンダーに興味がなくてもどんな人でも読んだほうがいいです。
読む必要のないのは、