『言葉はいのちを救えるか?』を読んで
この本を読みました。
彼女のBuzz Feed Medical時代に、どの記事も読んでいました。
今回、追加取材と加筆がされていてさらに読み応えがありました。
帯の「どうして人はいつか死んでしまうのに生きるのだろう?」という問いはとても重い。
私は以前からときおり、自分が死ぬときはどんななんだろう?と考えることがあります。
そんな私が、今日は深夜テンションでお送りします。
Amazonより。
【目次】
I部■優生思想に抗う
1 難病と生きる──岩崎航・健一さんの「生きるための芸術」
2 知的障害者が一人暮らしすること──みんなを変えたげんちゃんの生き方
3 なぜ人を生産性で判断すべきではないのか──熊谷晋一郎さんに聞く負の刻印「スティグマ」
II部■死にまつわる話
4 安楽死について考える──幡野広志さんと鎮静・安楽死をめぐる対話
5 死にたくなるほどつらいのはなぜ?──松本俊彦さんに聞く子どものSOSの受け止め方
6 沈黙を強いる力に抗って──入江杏さんが語る世田谷一家殺人事件もうひとつの傷
III■医療と政策
7 「命と経済」ではなく「命と命」の問題──磯野真穂さんに聞くコロナ対策の問題
8 トンデモ数字に振り回されるな──二木立さんに聞く終末期医療費をめぐる誤解
IV部■医療の前線を歩く
9 HPVワクチン接種後の体調不良を振り返る──不安を煽る人たちに翻弄されて
10 怪しい免疫療法になぜ患者は惹かれるのか?──「夢の治療法」「副作用なし」の罠
11 声なき「声」に耳を澄ます──脳死に近い状態の娘と14年間暮らして
終章 言葉は無力なのか?──「家族性大腸ポリポーシス」当事者が遺した問い
この本で、私が付箋を貼ったところを紹介します。
なぜ人を生産性で判断すべきではないのか──熊谷晋一郎さんに聞く負の刻印「スティグマ」の章にたくさん貼りました。
ここに出てくる「生産性とは無関係に、すべての命が無条件に肯定されるべきだ」という部分、感覚的に当然そう。
でも、杉田水脈氏みたいな「生産性こそが生きる価値」というような人がいたり、なぜ生きているだけで肯定されるべきなのかを改めて尋ねられたりしたときに、論理的に反論することは意外に難しい。
この本で、その反論のための根拠を得た気持ちがします。
ここにガーンとなったのです。
つまり、人の必要性こそが価値の源泉であって、生産性にも価値は宿るけれども、それは手段的かつ二次的な価値に過ぎないのではないかと私は思うのです。誰にも必要とされない財やサービスを生産したとして、その生産性に価値や宿るのでしょうか?
生産性とは、必要があってこそのものなので、存在するだけで必要性を生む「生きている」ということはそれだけで一次的に価値があるんですね。
そう説かれたらまったくその通りなのに、なぜ自分で思いつかなかったのだろうと感じました。
以前に読んだ『働かざるもの、飢えるべからず』も、今ならもっとよくわかると思う。
この小飼弾氏の本はもう、絶版だった。
私はベーシック・インカムという言葉を初めてこの本で知りました。
一定額を全員に配り、それ以上なにかしたいとかお金がほしいという人は働けばいいという考え方なんですね。
読んだ当初の2011年に「お金をもらわなくてもついやってしまうような、自分なりに意義のあることを見つけることが大事なのだな」と思ったのですが、自分が特別に得意だったり大好きだったりすることを見つけ出さなくても、「生きる」とか「幸せに生きる」を目標にしていいのだとこの章を読んで思いました。
先日、ある学術集会の講演を聞いていてビックリしたんですが、世の中的にはコンピュータ、スマホ、SNS、AIは悪者で、「依存症ビジネスから子どもを守るためには遠ざけたり制限したりするしかない」という考え方が主流のよう。
私は「違うと思うんだけどな」と感じていたところ、松本俊彦先生の章に若者や若者の情報の使い方を信頼するような文章を見つけました。
今は、ネット上でいろんな情報を収集することもできます。もちろん変な情報もたくさんあることは承知の上で言いますが、やはり情報は子どもを救うのではないかと思っているのです。
子どもにスマホやタブレットを持たせると、いただけない危険なサイトにアクセスしたり、課金付きのゲームで大変なことになったりする子もいます。でも、一方で、「君はそんなサイトを知ってるの?」とこちらが驚くような情報にたどり着いている子どももいます。
子どもたちは、あのやわらかい脳みそを全部使って、新しい世界に手を伸ばしていきます。僕はその好奇心がその子たちを救うのではないかと思うのです。
(╭☞•́⍛•̀)╭☞ソレナ
大人が心配するよりも、もっと子どもたちは上手に情報を得て活用できると私は信じています。
もうすぐ夏休みが終わってしまうけれど、もし近くにいる子どもが学校がつらい、死にたいなどのSOSを出していたら、ぜひこの「死にたくなるほどつらいのはなぜ?──松本俊彦さんに聞く子どものSOSの受け止め方」だけでも読んでほしい。
怪しい免疫療法になぜ患者は惹かれるのか?──「夢の治療法」「副作用なし」の罠という章では、今どきまだそんな酷いことを言う医師がいるのかと唖然としました。
2010年当時の医師が、石森さんへのがんの告知をした際の配慮の無さ、以降の外泊・代替療法をしたいという茂利さんと家族の希望への冷たさは酷い。
標準治療と医師に失望して当然です。
その医師自身や大事な家族ががんになった際に、主治医がそんなことを言ったらどう思うのかという想像力がないのか?ということに私は唖然としたのです。
私は生死の際に立つ患者さんと接することはないけれど、コミュニケーションは大事だなと思います。
終章は、この本のタイトルがひっくり返るようなことが起き、特に胸が痛みました。Webで読んだときには、こんなことになるとは予想もしなかった。
それでも、この一冊を読み終えて、私は言葉に希望を持ちたいと思いました。
本書にもあるHPVワクチンの件では、日本中の世論と読売新聞社を相手に戦い、状況をひっくり返した岩永さんです。
これからにも期待をしたい。